研究概要 |
根の重力に対する初期応答の異常なシロイヌナズナ突然変異体では重力屈性が完全に消失しないため、突然変異体のスクリーニング・遺伝解析のための効率的な形質評価が行えず、根の重力応答に関する遺伝学的解析が立ち後れている。この問題を克服し、より高感度に根の重力屈性の異常を検出するため、重力屈性と光屈性との干渉作用を利用した実験系に注目した。シロイヌナズナの根は正の重力屈性を示すとともに、負の光屈性を示す。野生型のシロイヌナズナの根では、下側から光を照射した場合、重力屈性が光屈性に比べて強く発現する結果、根は下方向に伸長する。一方、重力感受性が低下する突然変異体では、同じ条件下で、光屈性が強く発現し、根は上方向に伸長する。したがって、本実験系を用いることにより, 根の重力屈性の低下を感度良く検出でき、新規のシロイヌナズナの根の重力屈性が異常な突然変異体の単離と、その遺伝学的解析が可能になると期待される。この重力屈性と光屈性との干渉作用を利用した実験系を用いて、EMS処理で突然変異を誘発した10万株のシロイヌナズナ(Col)のM_2個体をスクリーニングし、44系統の突然変異体を単離した。44系統の突然変異体のうち、ラフマッピング、塩基配列の比較、および相補性検定の結果から、30系統はAUX1遺伝子に、7系統はPIN2遺伝子に、2系統はARG1(Altered Response to Gravity1)遺伝子に、1系統はPGM(phosphoqlucomutase)遺伝子に突然変異が生じていると考えられた。今後、突然変異遺伝子が未同定の4系統の突然変異遺伝子を同定することにより、根に重力応答性を付与する新しい分子を同定できると期待される。
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