研究課題
光合成は酸化ストレスに対してきわめて感受性が高い。これまで研究代表者は、活性酸素が光化学系IIの修復を阻害し、修復に必要なタンパク質の新規合成を翻訳レベルで抑制することを明らかにした。さらに、活性酸素による翻訳阻害は、翻訳因子エロンゲーションファクターG(EF-G)の酸化によることを明らかにした。平成19年度の研究では、EF-Gの酸化的傷害のメカニズムを解明することに焦点を絞った。ラン藻Synechocystis sp。PCCのEF-G(Slr1463)では、活性酸素によって特定のCys残基が酸化されることがわかった。5つのCys残基を順次Serに置換したところ、Cys105とCys242が酸化を受けて、ジスルフィド結合を形成することがわかった。C105S改変体では、過酸化水素によるCys残基の酸化がまったく起こらず、この改変タンパク質を無細胞タンパク質合成系に加えたところ、翻訳活性が過酸化ストレスに対して耐性を示した。したがって、Cys105が活性酸素のターゲットとなり、このCysを改変することによって翻訳装置の酸化ストレス耐性が増大することが示唆された。Cys105をSerに改変したEF-GをSynechocystisで過剰発現させた。その結果、タンパク質合成能の酸化ストレス耐性が増大し、光化学系IIの光阻害が緩和することが観察された。したがって、EF-Gの酸化が翻訳系の酸化ストレス感受性を主要因となり、光合成の光阻害に大きく影響することがわかった。
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