研究課題
環境ストレスにより生じる活性酸素は、光合成の修復に必要なタンパク質の新規合成を阻害して光合成の機能を低下させる。これまでの研究により、活性酸素の主要なターゲットが翻訳因子エロンゲーションファクターG(EF-G)であることが明らかになっている。本研究では、EF-Gに焦点を絞り、EF-Gの酸化ストレス傷害の機構、酸化還元に関わるシステイン残基の改変、および電子伝達体チオレドキシンとの相互作用の解析を行い、EF-Gのレドックス制御と光合成の環境応答の関係をラン藻を用いて明らかにすることを目的とした。平成20年度の研究によって、EF-Gのレドックス制御に関与する2つのシステイン残基を同定することができた。さらにin vivoにおいて、これらのシステイン残基のレドックス状態がチオレドキシンによって制御されていることがわかった。これらのシステイン残基をセリンに置換したラン藻の変異株では、タンパク質合成が酸化ストレスに対して強くなり、光化学系IIの光阻害が緩和されることが観察された。以上のことから、光合成電子伝達から生じるレドックスシグナルがEF-Gを介して翻訳系に到達し、翻訳装置を活性化するメカニズムが示唆された。また、酸化ストレス状況下では、活性酸素がEF-Gを酸化型にしてその活性を失わせ、翻訳活性が低下することによって光合成の修復が阻害されることが示唆された。
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J. Biol. Chem. (印刷中)
Photosynthesis: Energy from the Sun
ページ: 1319-1322