平成20年度は、RSOsPR10過剰発現イネの各系統の生育特性評価および発現調節機構の解析、トウモロコシへの遺伝子導入系の確立を主要な目的として研究を進め、(1)RSOsPR10過剰発現イネ系統を用いた根の生育、養水分吸収、悪環境下での生育などの生育特性について検討したところ、水耕培養での幼苗の生育状態、乾燥、塩耐性は、野生型と有意な差は見られなかった。しかし、ポット栽培による特定網室内での評価試験では、PR10過剰発現イネ系統S3、S4およびS19系統で明確な乾燥耐性が確認された。また、同系統で根の伸長促進(根長、根重量)が確認できた。(2)RSOsPR10遺伝子発現の情報伝達経路について特にジャスモン酸経路について、ジャスモン酸欠損変異体を用いて検討を加えたところ、少なくとも塩処理によるRSOsPR10遺伝子の誘導にはジャスモン酸の合成は必要のない可能性が高いことが明らかになった。このためエチレンを介した経路の可能性を考える必要がでてきた。(3)これまでの35Sプロモーターでのライン以外に、REX、ユビキチンプロモーターを用いた過剰発現ラインの作成に取り組んだ。(4)PR10を過剰に生産する大腸菌、酵母を作成し、高浸透圧、塩耐性について検討を加えたところ、酵母で塩、および、ソルビトールに対する耐性の向上が観察された。
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