研究課題
高等植物イネに存在する植物特有のATP駆動型のモータータンパク質キネシンの生化学的特徴付けを行い、植物の生理的な役割との関係について考察を行った。(1)植物特異的なイネキネシンO12について生化学的特徴付けと細胞内での局在化観察を行った。酵素化学的ATPase活性および微小管との親和性は、動物種の従来型キネシンより非常に低いことが示された。アクチンとの相互作用の実験から、CHドメインにアクチンが結合することにより、ATPase活性が抑制的に制御される興味深い事実が明らかとされた。さらに、蛍光性タンパク質であるGFPとCHドメインとの融合タンパク質を植物細胞において発現させることにより、アクチンにO12のCHドメインが直接結合していることが示された。(2)植物特異的なイネキネシンK23の生化学的特徴付けを行った。ATPase活性は、O12と同様に動物種の従来型キネシンより非常に低いことが示された。面白いことに、微小管との親和性はO12と異なり従来型キネシンと同程度であることが明らかとされた。K23の内在性の蛍光性アミノ酸トリプトファンと蛍光標識ATPアナログとの間の蛍光共鳴エネルギー移動FRETを利用した速度論的解析において、K23は従来型キネシンには見られない特徴的な速度論的特性を持つことが示された。(3)イネキネシンK16の特徴的な構造の生化学的性質への影響について遺伝子工学的な手法を用いて調べた。結晶構造上で観察されたK16の特徴的な構造が、イネキネシンK16の酵素化学的特性に大きく反映していることが示された。(4)独自に開発した新規蛍光性ATPアナログMANTTPを用いてイネキネシンK16の構造的特性を解析した。結晶構造解析から推測された重要と考えられる部位が、イネキネシンK16のユニークな酵素化学的性質を決定していることを示唆された。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
The Journal of Biochemistry
巻: 149 ページ: 91-101
巻: 149 ページ: 539-550
Biochem.and biophys.research communications
巻: 401 ページ: 251-256