シロイヌナズナのAtRAD26蛋白質は、ATR、ATMなどのセンサーキナーゼの下流に位置し、チェックポイントのシグナル伝達過程で重要な役割を果たしていることが予想されている。そこで、今年度はシロイヌナズナのAtRAD26蛋白質がセンサーキナーゼ群によってリン酸化されるかどうかを解析するとともに、コイルドコイル領域を介しか2量体を形成することを明らかにした。これと同時に、DNA損傷応答の過程で必須な蛋白質間相互作用を検出した。 1.酵母2-hybrid実験系を用いてAtRAD26遺伝子の2量体形成に必要なドメインの同定を試みた。AtRAD26の全長、AtRAD26-NT(コイルドコイル領域を含む)、AtRAD26-NT2(コイルドコイル領域を含まない)、またはAtRAD26-CTを酵母細胞中に導入し、蛋白質間の相互作用を検証した結果、両蛋白質がコイルドコイル領域を含む場合には相互作用が見られたが、どちらか一方がこの領域を欠くと相互作用が失われた。このことから、コイルドコイル領域がAtRAD26の2量体形成に必須であることが明らかになった。 2.AtRAD26がATRなどのセンサーキナーゼによってリン酸化されるかどうかを調べるため、大腸菌中で発現させたAtRAD26と植物組織から抽出した核蛋白質画分を[γ-^<32>P]ATPの存在下で混合し、AtRAD26への^<32>Pの取り込みを解析した。その結果、野生型の植物由来の抽出画分では、強い^<32>Pの取り込みが見られたが、AtATR欠損株由来の抽出画分では取り込みが半減した。このことから、AtRAD26がAtATRを主体としたセンサーキナーゼによってリン酸化される可能性を示唆した。 3.損傷乗り越え型ポリメラーゼであるAtPolηが紫外線損傷を乗り越えるには、複製装置を形作るPCNAとの相互作用が必須であることを明らかにした。
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