研究課題/領域番号 |
19570050
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
市川 裕章 独立行政法人 農業生物資源研究所, 植物科学研究領域・光環境応答研究ユニット, 上級研究員 (30355755)
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研究分担者 |
高野 誠 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物科学研プ即域光環境応答研究ユニット, ユニット長 (20355754)
清田 誠一郎 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物科学研プ即域光環境応答研究ユニット, 主任研究員 (90414903)
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キーワード | ジャスモン酸 / 植物ホルモン / 生長制御 / シグナリング / ストレス応答 / TIFY / JAZモチーフ / 細胞周期 / イネ |
研究概要 |
遺伝子の構成的過剰発現がもたらす異常表現型を指標にした包括的遺伝子機能解明システム〔FOX(Full-length cDNA OvereXpressor gene)Hunting System〕をイネに適用する過程で、顕著な生育促進を示す2つの独立したFOXイネ系統を見出した。これらの系統は桿や根の伸長促進や種子胚乳の肥大等の表現型を示した。この異常表現型は、細胞伸長の促進あるいは細胞分裂の促進の何れか、あるいは両方によって引き起こされたと推測した。節間や種子胚乳の細胞を詳しく観察した結果、生長促進型FOXイネ系統の細胞の大きさは野生型と同等であったが、細胞数の増大が見られた。また節間等の組織のイネオリゴマイクロアレイ解析の結果、生長促進型FOXイネでは複数のB型サイクリン遺伝子の発現上昇が見られた。以上より、この異常形質は細胞の伸長によるものではなく、分裂の促進に起因することが判明した。両系統ではTIFY/ZIM モチーフタンパク質をコードするcDNA(FR29と呼称)を過剰発現していた。イネ野生株におけるFR29遺伝子の発現は、遠赤色光照射や傷害により迅速かつ一過的に上昇したことから、FR29の光およびストレスシグナリングへの関与が示唆された。シロイヌナズナではJAZ(JASMONATE ZIM-DOMAIN)タンパク質が、SCF^<coI1>ユビキチンリガーゼの標的になっており、ジャスモン酸(JA)応答性遺伝子発現のリプレッサーとして働くことが示されている(Thinesら 2007他)。FR29-FOXイネ系統にMeJAを処理したところ、生長阻害の大幅な緩和、すなわちJAに対する感受性の低下や、JA応答性遺伝子発現誘導の抑制が見られた。以上の知見から、FR29はJAシグナリングを抑制的に制御する一方、細胞分裂を促進することで植物の生長を促す機能を持つと考えられた。
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