研究概要 |
材料の酵母は,ゲノム解析に用いられた一倍体のサッカロミセス,セレビシエS288C株を用いた。液体培養した指数増殖期の酵母細胞を,遠心で集め,2枚の銅版にはさんで,液体プロパンを用いて急速凍結した。試料を2%四酸化オスミウム,アセトンでー80℃で置換固定を行い,エポキシ樹脂に包埋した。この方法は現在,細胞を生きた状態のまま,電子顕微鏡観察を可能としたすぐれた方法であると言われている。まず,通常の超薄切片を作製して,サッカロミセス,セレビシエ細胞にどのような細胞成分が観察されるかを見た。その結果,細胞壁,原形質膜,核,核小体,核膜,ミトコンドリア,粗面小胞体,滑面小胞体,リボソーム,小胞,液胞,紡錘極体,微小管,アクチンケーブル,ウイルス様粒子,サイトゾルなどが存在することを確認した。また,原形質膜,核膜の内膜と外膜,ミトコンドリアのクリステと外膜,液胞膜などの膜系がきれいに観察され,膜の厚さの計測が可能であることも確認した。次に試料をダイヤモンドナイフを用いて,約200枚の連続超薄切片を作製した。現在,連続超薄切片を低倍で撮影して,1個まるごとの細胞が切片に含まれていることを確認し,確認できたものについて1万倍で撮影を開始する予定である。このとき,細胞構造は細胞周期に伴って大きく変化するため,本研究では,出芽前(G1期)の細胞を5個選び,すべての細胞成分について,それぞれの数,長さと直径,体積,膜の厚さを計測する。
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