研究概要 |
1.肺の分枝形態形成で重要な役割を担っている分子を解明する方法として、問題となる分子を上皮 組織で過剰に発現させその影響を調査することが挙げられる。しかし、その基幹技術である遺伝子導入法は、肺上皮では未だ確立されていない。そこで、本研究では、マウス胚肺上皮を用い、遺伝子導入法の確立を目指した。平成19年度の実験からエレクトロポレーション法が有望であることが判明したので、平成20年度はその改良をおこなった。市販のエレクトロポレーションキュベットに改良を加え容量10μlとし、高濃度のGFP発現プラスミド溶液中でのエレクトロポレーションを可能にした。電圧、パルス数の条件検討をおこなったところ、35V-4回または40V-3回で効率よくGFP発現細胞が認められた。これにより、本研究計画の最終目標である「肺上皮で発現している転写調節因子を気管上皮で発現させ、気管上皮の分枝形態形成能を活性化する」という実験を平成21年度におこなう準備が整った。 2.肺と同様に分枝する器官である唾液腺についても平行して研究をおこなった。その結果、唾液腺原基形成初期に間充織から分泌されるFGFに反応して、上皮でのEGFレセプターならびにLPAレセプターの発現が誘導され、遅れて分泌されるEGFリガンドに対して上皮が反応資格を有するようになることを明らかにした(Nitta et al., 2009)。このFGFとEGFの協調作用は、肺の分枝形態形成を研究する上でも検討を要する事項であり、肺と唾液腺の分枝形態形成を平行して研究することの意義が再認識された。
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