研究課題
下垂体より分泌される生殖腺刺激ホルモン(GTH)は、2種類のタンパク鎖(α鎖とβ鎖)からなるヘテロ2量体の糖タンパク質ホルモンである。最も原始的な脊椎動物とされる無顎類・メクラ(ヌタ)ウナギ類の下垂体にもGTH分子が存在することが示唆されているが、この動物の生殖内分泌機構や胚発生に関する知見は極めて乏しい。本研究では、新潟県産のクロヌタウナギの下垂体から単離したGTH遺伝子を基盤に組換えGTHを構築し、それをヌタウナギ類における生殖内分泌機構の理解や人為催熟技術へ繋げることを目的とし、以下の研究を進めた。平成19年度の研究において、クロヌタ(メクラ)ウナギのGTH遺伝子をPCR法により増幅し、GTH分子を発現するためのベクターを構築した。また、この発現ベクターを酵母細胞に導入し、形質転換体を作出し、発現クローンのスクリーニングを行った結果、複数のクローンが分子量約40KDaのGTHを産生していることを確認している。今年度の研究においては、GTHを発現する形質転換体を大量に発現誘導し、その培養上清から精製したタンパクを生化学的に解析した。その結果、約50KDa付近に単一のタンパク質が認められた。また、このタンパクを還元処理すると、約25KDaと22KDaの2種類のタンパクが認められ、これら2種類のタンパクは、抗ヌタウナギGTHα鎖抗体とβ鎖抗体にそれぞれ陽性反応を示した。この結果は、精製した組換えタンパクが2量体構造をとり、ヌタウナギの下垂体GTHに極めて類似していることを示唆している。さらに、組換えGTHのアミノ酸配列解析から、2種類のタンパクのN末端10残基の配列は、天然型GTHのアミノ酸配列と極めて高い相同性を示した。次年度において、組換えGTHの生理活性を明らかにし、ヌタウナギにおける人為催熟技術の確立に向けた生物学的基盤を構築したい。また、組換えGTHを抗原として抗血清を作出し、血中ホルモン量を測定するためのアッセイ系が確立できれば、ヌタウナギ類の生殖内分泌機構の理解に繋がると確信している。
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