研究概要 |
1.p53欠損マウス卵管由来の上皮・間充織細胞株の共培養実験から、運命未決定型上皮細胞株を卵管繊毛型上皮細胞へと運命決定誘導能をもつ間充織細胞株を選別した。さらにシグナルシークエンストラップ法を用いて、その運命決定誘導に関与する間充織由来分泌性因子(fstl-1)を単離した(Umezu et al., 2010)。 2.運命未決定型上皮細胞を成体の卵管上皮と同様な形態に分化誘導できる実験系の開発に成功し、卵管の部位によって間充織細胞の誘導能が異なること、卵管上皮細胞の運命決定誘導が不可逆的であることを明らかとした(Yamanouchi et al., 2010)。 3.p53欠損マウス膣由来の上皮・間充織細胞株の共培養実験から、膣上皮の多層化誘導能を有する、および有しない間充織細胞株を選別した。マイクロアレイ解析により、膣多層化誘導に関与する遺伝子の網羅的探索を行った結果、間充織に特異的な発現をする2つの候補遺伝子を同定した。 4.p53欠損マウス新生仔より卵管、子宮、膣由来の間充織細胞株を多数樹立した。上皮・間充織細胞株の共培養実験から、卵管分泌型上皮、子宮上皮、膣上皮への運命決定能力をもつ候補間充織細胞株を選別した。現在、運命決定能について組織の張替え実験系を用いてさらに検証している。 5.マウス組織の異所移植実験から、ごく数例ながら胎仔マウス舌上皮細胞を成体の舌上皮と同様な形態に分化させることに成功した。今後この実験系を改変して舌上皮の分化メカニズムの解明を行っていく。 6.Caイメージング解析から樹立したp53欠損マウス舌由来の上皮・味蕾細胞株に成体マウスの味蕾細胞と同等な味覚刺激応答性があることを明らかとした。 7.p53欠損マウス胎仔歯胚由来上皮細胞株を用いて、高効率で歯胚再形成を可能にする実験系の開発に成功した。現在、その実験系を用いて歯胚形成のメカニズムの解析を進めている。 8.p53欠損マウス胎仔の口腔粘膜上皮細胞株を用いた組織張替え実験において、口腔粘膜上皮細胞が歯胚上皮へ転分化しうることを明らかとした(Takahashi et al., 2010)。
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