本研究はショウジョウバエを用いて新規甘味受容体に関する知見と、その味覚受容体を発現する味覚ニューロンの摂食行動における意義を明らかにするために計画されたもので、平成19年度に達成するべき研究目標について、達成した成果と発表実績については以下のとおりである。 (1)甘味受容体の味ニューロンにおける発現特性、受容体間の共発現特性に基づく甘味受容体と甘味ニューロンの分類:二糖類トレハロースの受容体遺伝子であるTreと共発現する新規甘味受容体遺伝子の1つを発見した。この遺伝子は口器の味覚器にはほとんど発現が認められないが、脚部の味覚器の一部に存在するTre甘味ニューロンに共発現する。さらに脚部ある別の味覚器の一部にも単独で発現することがわかった。 (2)味覚一次中枢における投射部位特性の比較、他の味覚ニューロンとの比較:Treとは共発現しない新規甘味受容体ニューロンは、Treと共発現する甘味ニューロン、口器のTre発現甘味ニューロンのいずれとも軸索投射部位が異なる。甘味情報の入力経路には少なくとも3種類あること、投射特性が嗅覚のように受容体と1:1対応をもつ単純な機構でなく、共発現する受容体グループのコンビナトリアルな組み合わせ特性により決定される機構が示唆された。
|