研究概要 |
海水ウナギは哺乳類と同じように、血中Angiotensin II (ANGII)によって飲水を促進し、Atrial natriuretic peptide (ANP)によって飲水を抑える(Ando, et. al., 2000; Kozaka & Ando, 2003)。ウナギの脳ではMagnocellular preoptic nucleus (PM)とAnterior tuberal nucleus (NAT)及びArea postrema (AP)のニューロンが直接血液に接しており(Mukuda, et. al., 2005)、これら3領域がホルモンの受容部位だと考えられている。しかしこれら3領域でのANG IIとANPの反応性が低いので(PMでANG IIに対して9/124、ANPに対して2/98; NATでANG IIに対して2/98、ANPに対して7/94; APでANG IIに対して0/43、ANPに対して0/57)、これら3領域でのニューラルネットの解析に焦点を移した。PMのニューロンはAcetylcholine (ACh)とグルタミン酸によって興奮し、GABAやドパミンによって抑制されることから、PMにはこれらの神経伝達物質による入力があると考えられる。APでの入力についてはまだ見当がつかないが、NATにはAChによる興奮性と抑制性の2種類の入力がある(未発表)。 ウナギの飲水行動は嚥下からなり、上部食道括約筋の収縮と弛緩によって調節されている。この筋を支配しているのは延髄のGlossopharyngeal-vagal motor complex (GVC)であり、神経伝達物質としてAChを用いている(Mukuda & Ando, 2003)。AChは食道括約筋を収縮させるが、その収縮はIsotocin (IT)によって増強される(Sakihara, et. al., 2007)。またITはAChの刺激の無いときには筋を弛緩させる(Watanabe, et. al., 2007)。GVCニューロンは通常20Hzで自発発火しているが、その活動はCatecholamines (CAs)で抑えられ、この抑制はPrazosinで阻害される(Ito, et. al., 2006)。またGVCの背側にあるCommis-sural nucleus of Cajal (NCC)はCAs合成酵素であるTyrosine hydroxylaseの抗体で染まるが、ここを電気刺激するとGVCのニューロン活動は抑制され、この効果はPrazosinで阻害された(未発表)。
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