研究概要 |
海水ウナギの飲水行動は、血中で生じたアンギオテンシンIIによって促進され、心房性Na利尿ペプチドによって抑えられる(Ando et al.2000;Kozaka&Ando2003)。これらのペプチドが作用する脳部位として大細胞性視索前核と前隆起核及び最後野が考えられる(Mukuda et al.2005)。しかしこれら3領域でのペプチドに対する反応性が低いので、本年度は装置を改良し、ペプチドに反応するニューロンに当たる確率を高めることができた。しかしそれでも再現性が低く、11,月以降は全く神経活動が取れなくなった。そこでくも膜剥離の技術を開発し、脳脊髄液の組成を改良することによって、単一のユニット電位を記録することに成功した。新しい標本を開発するのにほぼ1年を費やしたので、ペプチドの効果を調べるのは次年度以降になる。 ウナギの飲水行動の律速段階は上部食道括約筋の収縮と弛緩であるが、この筋は延髄の舌咽・迷走運動核(GVC)によってコリナージックな支配を受けている(Mukuda&Ando2003)。また神経葉ホルモンであるIsotocinは、アセチルコリンの放出を促進することによって筋収縮を増強し(Sakihara et al.2007)、刺激のないときには筋を弛緩させる(Watanabe et al.2007)ので、飲水行動の重要な修飾因子だと思われる。GVCの神経活動は迷走神経葉やカハールの交連核を電気刺激すると抑えられることから、GVCはこれら2核からの入力を受けていると思われる。 胃と食道の連結部にある神経は、胃をバルーンで膨らませると、圧依存的に発火頻度を増大させ、30cmH_2Oで最大発火頻度60Hzに達する。一方胃を2%NaCl水溶液で膨らませると発火頻度は急激に上昇し、10cmH_2Oで最大発火に達し、その後プラトーを維持する。最初の早い反応は、液が直接胃壁に接触する触刺激によるもので、プラトー部分では触刺激の脱感作とイオンによる抑制の効果が考えられる。
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