研究課題
本研究は、カマキリ、ハンミョウの幼虫と成虫、スズメガ等の昆虫を対象とし、動物が対象物までの距離を測る視覚機構を解明することを目的とする。本年度は以下の成果を得た。1)ハンミョウの幼虫は焦点調節不可の単眼1個でも、対象物が捕獲可能な距離内か、その外かを知ることができる。組織切片でレンズー網膜間の距離を測定し、単離した角膜レンズの焦点距離をレーザ照射で測定した。その結果、角膜レンズの焦点は網膜表層に結像することが明らかになった。従って、遠くの対象物は鮮明な正焦点像を結ぶが、至近距離の対象物の像は、網膜表面下に後退し、その結果不鮮明になる。担当者は幼虫が像の鮮明度で対象物までの距離を測る可能性を提唱した。2)ハンミョウ(成虫)は地面を走り、エサとなる昆虫を捕獲する。10〜20cm程度走り、停止し、又走り出す。いわゆる、stop-and-goを繰り返す。ビデオ解析から、停止時に標的を正中面の両眼視の視野で標的を捉えるように再定位することが明らかになった。さらに、停止時は頭部を地面から約1cmの高さに保っている。この高さから、地面の対象物を臨む俯角は、距離に応じて変化する。無限遠の標的は、水平面を望む個眼に投射し、標的が近づくにつれてより腹側に位置する個眼に投射するようになる。この俯角による距離識別を、複眼の視野を制限することで定量的に解析した。3)昆虫の視覚機能は、網膜の構造、および情報処理を行う視葉のニューロン構築に依存する。本年度は、ハンミョウ、カマキリ、スズメガの複眼網膜の細胞構築と視葉の構造を電子顕微鏡観察とゴルジ法で調べた。昆虫の視葉は1amina層、medulla層、lobula、lobula plateよりなるが、これらの昆虫では、1amina層からlobdaへ直接投射するニューロンが多数同定された。これらの構造と運動検出および距離識別の関連を検討中である。
すべて 2007
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