研究課題
世界自然遺産として登録された知床半島の周辺海域は、その生態系の保全と持続的漁業の共存に向けての海域管理計画の策定を国際社会からもとめられている。本研究はそのための基礎資料として、また今後のモニタリングのためにも重要性の高い、知床半島周辺海域の魚類相の現状を明らかにすること目的として行われている。本年度は特に半島全域の浅海域に生息する魚類の種多様性を明らかにするために、春期(6月)と秋期(9月)にそれぞれ8日間の現地調査を実施し、半島域の延べ14カ所で魚類のサンプル採集を行った。その結果、昨年度の調査で知床半島の浅海域から9目25科86種の魚類の生息を確認したが、今年度の調査で未同定種2種を含む8種が新たに確認され、合計で10目7科94種になった。今年度に新たに確認された種はウグイTribolodon hakonensis、キツネメバルSebastes vulpes、アゴハゼChaenogobius annularis、ヒラメParalichthys olivaceus、マコガレイPleuronectes yokohamae、クロガシラガレイPleuronectes schrenki、ハコダテギンポ属の1種Rhodymenichthys sp.およびタウエガジ属の1種Stichaeus sp.である。これらのうち、ウグイ、キツネメバル、クロガシラガレイの3種は知床半島周辺も含めた道東海域にも分布する魚類であるが、本調査では今年度初めて確認された。一方、ヒラメ、マコガレイおよびアゴハゼは北海道では主に日本海側と道南に太平洋岸には生息するがオホーツク海には少ないとされている魚類である。また、ハコダテギンポ属の1種およびタウエガジ属の1種いずれも未記載種である可能性が高く、現在精査中である。
すべて 2008
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Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. A, Suppl 2
ページ: 25-37