世界自然遺産に登録された知床半島の周辺海域は、その生態系の保全と持続的漁業の共存に向けての海域管理計画の策定を国際社会からもとめられている。本研究はそのための基礎資料として、今後のモニタリングのためにも重要性の高い、知床半島周辺海域の魚類相の現状を明らかにすることを目的として行われた。 本年度は特に半島全域の浅海域に生息する魚類の種多様性を明らかにするために、春期(5月)と夏期(8月)にそれぞれ約8日間の現地調査を実施し、半島域の延べ14カ所で魚類のサンプル採集を行った。その結果、過去2年間の調査とあわせて4未記載種を含む10目27科97種を確認した。これら調査で確認された知床半島浅海域の魚類の科レベルの分類群構成は、カジカ科が19種(全体の20%)、タウエガジ科が18種(19%)を占め、典型的な寒冷性魚類である2科が極めて高い種多様性を示すことが明らかになった。その他にはトクビレ科とカレイ日がそれぞれ7種(7%)で、メバル科(5種)、ニシキギンポ科(4種)、クサウオ科(4種)と続き、いずれもが寒冷性の魚類分類群であった。種レベルではハコダテギンポRhodymenichthys dolichogasteとギスカジカMyoxocephalus stelleriが圧倒的に優占的で、スジアイナメHexagrammous octogrammus、フサカジカPorocottus allisi、ベロBero elegans、ムスジガジErnogrammus-hexagrammusなどがそれらに次ぐ優占度を示し、これらの魚種は知床半島のほぼ全ての調査点で確認された。本研究で確認された魚類のうち暖海性と見なせる種はマフグTakifugu porphyreus、メナダChelon haematocheilusおよびヒラメParalichthys olivaceusの3種のみであった。
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