研究概要 |
貧毛類は湖沼に普遍的に出現する動物群で,水深が大きな湖沼の深底部では唯一の底生動物となることも多い。しかし,日本でその種組成が解明されている湖沼は,いまだ一部に限られている。本研究の目的は,日本列島に分布する自然湖沼の深底部に出現する貧毛類群集の組成を種レベルで把握することにある。これは,以下の2つの観点から進められる。ひとつは,日本の湖沼生物の多様性の全貌や生物地理学的背景を明らかにすることである。湖沼ごとに隔離された深底部に成立する動物群集は,集水域の生物地理学的特徴を反映していると予想される。日本列島には成因や歴史の異なる多くの自然湖沼が分布するため,種組成を相互に比較することによって,日本の淡水生物相の特徴や群集の成立背景が浮かび上がると期待される。もうひとつは,出現種と湖沼環境との関連を明らかにする点である。多くの湖沼で種組成の把握が行われることによって,湖沼環境と出現種の対応が明瞭になり,貧毛類を湖沼環境の指標として役立てることができると期待される。
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