研究概要 |
日本に生息するニホンジカの起源を明らかにすることを目的として、多重渡来説と単一渡来説のどちらの説が支持されるか検証するために、データベースから北海道、本州、四国、九州、沖縄において50ハプロタイプのニホンジカのミトコンドリアDNA調飾領域の塩基配列、および自ら決定した7ハプロタイプの調節領域の塩基配列を用いた。また、これまでニホンジカにおいて不明であった調節領域の反復配列の生成過程について、先行研究(Mundy et. al.,2004)で示された生成過程メカニズムに基づき、ニホンジカの塩基配列においても当てはまるのかを検証した。 先行研究では反復配列の生成がミトコンドリアDNAの複製時に起こるとされ、複製時にステムループを形成する特異的な配列があることが示されている。そのような二次構造を予測するソフトウェアであるRNAstructure4.4により、ニホンジカにおいても反復配列の生成に関与する可能性がある塩基配列があることが示された。さらに新たに開発したリポートモチーフ検索法により、ゲノムデータ検索をおこなったところ、先行研究(Nagata et. al., 1999)で発見された反復配列のユニット26種類に加え、新たに26種類のユニットを見いだした。しかし、反復配列の全ユニットの最節約的系統解析の結果、ユニットにはっきりとした派生順序は見られず、ユニットの生成順序を確定することは困難であった。また、反復配列が生成される過程と共に、消失する可能性が示唆されたことから、シミュレーションについては生成・消失をパラメータとして加えることが考えられた。リフュージアの一つと考えられる近畿地方については集中的にシカサンプルを収集して、ネットワーク解析を行った。その結果、現在の集団構造は、人為的影響を強くうけていることが明らかになった。
|