研究概要 |
タイ高地(チェンマイ近郊)及びベトナム高地(ダラト近郊)のマツ林内のアンモニア菌相の調査を野外及び室内での尿素施与実験によって行なった。タイのマツ林では腐生性アンモニア菌として各種不完全菌、Ascobolus denudatus, Peziza moravecii, Lyophyllum tylicolor, Coprinopsis sp.,菌根性菌としてHebeloma sp.の発生が、ベトナムのマツ林では腐生性アンモニア菌としてAmblyosporium botrytis, As.denudatus, L.tylicolor, Coprinopsis sp.,菌根性菌としてHebeloma sp.の発生が確認された。同Hebeloma sp.はITS rDNAによる分子系統解析の結果、section Theobromiaに属する菌種と同定した。以上から、腐生性アンモニア菌はアジア熱帯高地からアジア冷温帯に共通する広布種が多いこと、菌根性アンモニア菌であるHebeloma spp.はいずれの種も分布範囲が限定されていることが明らかになった。タイのマツ林の尿素施与区より分離された腐生性アンモニア菌53菌株の内46菌株にセルロース分解酵素活性が、この内27菌株にリグニン分解酵素活性がみられたことから、アジアの熱帯高地のマツ林においても温帯~冷温帯のマツ林と同様、腐生性アンモニア菌は高濃度の窒素条件下でのリター分解の主体となっていると推察される。
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