研究概要 |
当初の計画に基づいて,本年度は本年度は屋久島,三重県志摩市および八丈島の日本の黒潮流域に沿って,特に世界中に広く分布するとされているクサヤモロについて材料を集めた.また,インドネシア,スラウェシ島北部のビトゥンにおいてアカアジ種群,オアカムロ,クサヤモロ,モロを,タイ南部ソンクラーにおいて,インドマルアジをそれぞれ採集した.さらにタイプ標本の調査のために,フランス自然史博物館,オランダ自然史博物館,ベルリン動物学博物館を訪問し,それぞれの博物館に所蔵されている,タイプ標本やその他の標本を観察した.これらの標本調査の結果,昨年度の結果で示唆したように,アカアジには遺伝的,形態的に分化した2型がみられ,そのひとつはタイプ標本調査からDecapterus kurroidesと同定された.また,D.akaadsiは明らかにD.kurroidesの新参シノニムになり,アカアジは確実にアンダマン海からインドネシアまで広く分布することが明らかになった.もう一方の種はアカアジに比較して体高が低く,外観的にはオアカムロに類似している.しかし,オアカムロ固有の形質である鯉蓋縁辺が鋸歯状になることはなく,また側線直走部始部は稜鱗であり,オアカムロとは異なっている.また,昨年度はマルアジとインドマルアジとの形態的類似性から,これらが同種である可能性を示唆したが,本年度行った遺伝子解析から,両種は明らかに別種であると結論づけられた.これらの結果から,本属魚類の種構成の外観が明らかになりつつある.今後はさらに遺伝子解析を進め,系統を明らかにする.
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