研究概要 |
「蛇紋岩/通常土壌」、「渓流帯/林床」そして「高緯度/低緯度」、「高標高/低標高」のように生育環境が異なる実験系において、環境からもたらされる自然選択圧が、どのような遺伝子座に影響しているのかを検出することを目的にして研究を行った。 「渓流帯/林床」では西表島でリュウキュウツワブキとツワブキ、「高標高/低標高」では伊吹山と藤原岳(三重県)でイブキハタザオとハクサンハタザオを用いて、AFLPを使ったゲノミックスキャンで中立進化から外れる遺伝子座(outlier loci)を網羅的に探索した。「蛇紋岩/通常土壌」では、高知県下でヤナギノギクとヤマジノギク,ソナレノギク,ハマベノギクについて解析を行った。「高緯度/低緯度」と「高標高/低標高」が重複した環境傾度については、南北分化を起こしたミヤマタネツケバナでは解析対象を具体的な遺伝子に絞り込んで、フィトクロム遺伝子群phyA〜phyEまでの塩基配列を解析して、非中立進化を検証した。そして期待したとおりの結果が得られ、4本の論文にして受理された。ヤナギノギクとヤマジノギク,ソナレノギクについては,蛇紋岩耐性が平行進化の結果として獲得されたことが示唆され,論文にまとめた。 リュウキュウツワブキとツワブキの間では、AFLPでこのようなoutlier lociを発見できなかった。そこで両者が混生する集団において、遺伝子流動をマイクロサテライトマーカーで調べたところ、両者間には頻繁な遺伝子流動が生じていた。同一個体の種子から形成される子株には様々な葉形態のものが形成されており、これが発芽、定着した場所で流水などの自然選択圧によって淘汰されているものと思われる。イブキハタザオとハクサンハタザオではAFLPで検出した総アリルの約4%がoutlierで、分類とは関係なく標高の環境傾度に沿って選択的に見出された。
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