研究概要 |
生殖様式は生物の進化過程、種分化の機構に大きい影響をもたらしている。シダ植物では通常の有性生殖の他、無配生殖を行うと報告されている。シダ植物の「種」多様性を明らかにする上で無配生殖種(apo.)の種分化と多様性過程に関する研究は欠かすことができない。本研究では、不等減数分裂によって、低倍掌化の過程がオシダ属に存在することを明らかにした上、無配生殖種(精子を作れる)が近縁の有性生殖種との交雑によって、遺伝的変異を取り込む多様性形成機構の仮説が立てられ、この多様性形成機構が実際に自然界で起こっていることを実証し、無配生殖種の多様化過程を検証することを目的とする。 今年度(平成20年度)は、確定された生息地の生態環境の調査と集団構成の分析を行い、細胞学的観察(染色体数、倍数性、胞子形成過程など)を行い、神奈川県,島根半島の集団に無配生殖型2倍体、3倍体、4倍体、雑種4倍体が混生していることを確認出来た。さらに、酵素多型分析により、各集団、各生殖型の倍数体の遺伝子型を推定し、神奈川県産の集団と島根県産の集団において、遺伝的構造が異なったことは明らかになった。また無配生殖3倍体にみられた多様性の形成機構に関する仮説の中の交雑過程を実証するため、胞子から配偶体の培養を行い、培養と交雑の実験手法を確立した。 平成21年度の研究において、無配生殖型と有性生殖型の胞子を採集、培養を継続し、人工交雑実験を行う予定である。人工交雑で得られた雑種F1の遺伝子型を分析・確定、野生株の遺伝子型と比較することによって、無配生殖3倍体にみられた多様性の形成機構を解明することが出来ると期待したい。
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