研究概要 |
蘚苔類の系統関係を,総合的取り組みによって明らかにしようとするものである.本年度は,蘚類の4亜綱主要分類群,クロゴケ類,ミズゴケ類,ナンジャモンジャゴケ類,マゴケ類のの系統関係を明らかにするために,大規模な分子データを得て,遺伝子の挿入や欠失などゲノムの構造の情報も利用して解析する必要があると考えた.その第一歩として,ミズゴケ亜綱を代表するものとしてオオミズゴケの葉緑体ゲノムの全塩基配列の解析に着手した.LA-PCRにより葉緑体ゲノム全長の配列を増幅し,シーケンス解析を行った.120-140kbの全長をもつと予測される葉緑体ゲノム配列のうち,約35kbの配列について情報を得た.現在,アノテーション作業と残りの部分のシーケンス解析を行っている.また,オオミズゴケの葉緑体ゲノムを精製し,DNA結合蛍光色素YOYO-1を用いて蛍光顕微鏡で観察した.葉緑体ゲノムは,40-50m程度の線状分子あるいは環状分子として観察できた.DNA分子量マーカーの観察像との比較から,オオミズゴケ葉緑体ゲノムは120-140kbの大きさを持つことが示唆された.また2量体,3量体に相当する大きいサイズのDNA分子が混在することを確認した.高等植物の葉緑体ゲノムで知られている,線状分子や多量体分子をコケ植物でも確認できたことから,葉緑体ゲノムが多様な形態をもつことは陸上植物における普遍的な性質と考えられた.環状ゲノム分子を鋳型として,葉緑体ゲノムをRCA(Rolling Circle Amplification)法で増幅することができたため,今後,この増幅産物をもとに葉緑体ゲノムの全塩基配列の決定を行う.タイ類ではまたフタマタゴケ目の分子系統学的研究を行った.次年度も本年度同様に研究を進める.
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