本年度は、沖縄島固有種リュウキュウコンテリギの四倍体について、近縁種を含めた核リボソーマルDNAのITS領域(AB377195~AB377211)、ならびに、葉緑体DNA(AB377064~AB377083)の塩基配列に基づく分子系統学的解析に基づいて複倍数体起源である可能性を示唆し、論文として取りまとめた。オオジシバリの倍数性複合体については、ハマニガナ(二倍体)とオオジシバリの頭花より採集した果実を播種して得た幼植物の倍数レベルの調査をおこない、複数の産地においてハマニガナの頭花上で雑種が形成されていることを確認した。この結果は両種の交雑および雑種形成が現在もなお琉球列島の複数の産地で異所的に進行していることを示す貴重なデータとなった。また、雑種性の種子はハマニガナの頭花上でのみ確認されたことから、同所的に生育しているオオジシバリによる繁殖干渉がおこっている可能性が示唆された。特に、八倍体が優占する南琉球でこの傾向が強く、このことが南琉球においてハマニガナの出現頻度が低いことの要因の一つとなっていることが考えられる。島嶼域における種の形成と衰退に関する極めて興味深い事例となると考えられ、現在もなお調査を継続中である。これらのテーマとは別に、複数の分類群について染色体レベルの調査をおこない、これまで染色体数が確認されていなかったヒメタツナミソウや琉球列島産のコナミキなどの染色体数を明らかにした。また、すでに広範囲から集められた材料について細胞学的解析を終え、種内倍数性の存在を明ちかにしたていたサトイモ科のつる性植物について、得られた成果を論文に取りまとめ投稿準備を進めている。
|