研究概要 |
本研究は,鹿児島以南の南西諸島におけるカンアオイ属(ウマノスズクサ科)植物の種多様性の実態とその分化の道筋を形態や染色体の比較,ならびに分子レベルの比較に基づいて明らかにすることを目的とするものである.今年度も昨年度に続き,分化の著しい奄美群島域における分化の実態を解明すべき研究を進めてきた. 前年度までの調査で,小型の葉をもつ種の島内での変異性や分布域については,かなり明らかになってきたが,大型の葉をもつ一種であるフジノカンアオイ群については不明な点が多かった.この一群にはオオフジノカンアオイ,あるいはヤンマカンアオイ(いずれも裸名)と呼ばれる個体群も報告されていた.また異質な葉をもつ個体が同所的に確認されていた.そこで,これらと基本種との関係,あるいは分布域について詳しく調査した.フジノカンアオイ群は,地域によって開花期に大きな違いがあり,12月頃開花する個体群からより遅い3月頃開花する個体群まで,地域ごとにずれが見られることが判明した.中部(名瀬周辺)地域個体群より,南部の湯湾岳や山間周辺個体群の開花期が遅れる傾向にあり,また花サイズも小型になる傾向が確認された.しかし形態変異は連続的であり,他の個体群から判然と区別されるような集団は確認できなかった.よってこれらは同一種の範疇にあると考えられた.
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