研究概要 |
尾索動物全体の系統進化の理解の上で重要であるグループ(種)を選択し、ミトコンドリア(mt)ゲノムの全塩基配列の決定を行い、その一次配列とそれ以外の高次情報に基づいて分子系統解析を行い、尾索動物の進化経路を明らかにすることを目的として、研究を行った。 1.20種以上の尾索動物について、cox1遺伝子、cob遺伝子のPCRによる増幅と塩基配列の決定を試みた。そのうち、全8種の尾索動物について、mtゲノムの全領域のPCRによる増幅を行った。ホヤ綱腸性目管鯉亜目ユウレイボヤ科ムネボヤ亜科に属するRhopalaea sp.について、そのmtゲノムの全塩基配列を決定した。その結果、ムネボヤ亜科はユウレイボヤ科ユウレイボヤ亜科(Ciona intestinalis等を含む)と近縁ではなく、むしろ無管亜目に分類されるべきであることが示唆された。また、Rhopalaea sp. mtゲノムは尾索動物の標準的な遺伝子構成(13蛋白質、2rRNA、24tRNA遺伝子)を持つが、既知のmtゲノムの遺伝子構造とは大きく異なっていた。また、他の種類については、現在その塩基配列の決定を順次行っている。 2.前年度mtゲノムの全塩基配列が得られたタリア綱サルパ目のRitteriella pictetiの塩基配列の再確認を行った。その結果、13,314塩基対の環状ゲノムであり、ATPase subunit 8 (atp8)遺伝子を欠くことが明らかとなった。atp8遺伝子を欠く事は、同属のサルパRitteriella amboinensisのmtゲノムと同様であったが、遺伝子配置は大きく異なっている。また、尾索動物mtゲノムの中でもRitteriella属の一次配列の進化速度が非常に速いことが明らかとなった。 3.得られた配列を用いて、順次分子系統解析を進めている。
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