研究概要 |
1.ホウオウゴケ属の亜属、節の分類ホウオウゴケ属は蘚苔植物のなかで最も大きな属の一つで,世界に約700種(Brotherus,1924)が記録されている.このため亜属や節の分類が種々試みられてきた.ホウオウゴケ属の亜属・節については,Muller(1848)のパイオニア的な研究がある.後にMuller(1900)が主に配偶体の形質に基づいて12節に分類した.Brotherus(1901&1924)は,4亜属12節に分類した.その後,Iwatsuki(1985)は6亜属5節に分類した.最近ではPursell&Bruggeman-Nannenga(2004)が主として〓歯と中肋の構造などに基づいて、4亜属5節に分類することを提案した. 本研究では光学顕微鏡及びSEMによるホウオウゴケ属の多くの種の〓歯を詳細に調べ,先端部(フィラメント)の表面構造が亜属・節の分類に極めて重要であることを明らかにした.また,可能な限り多くの種の中肋の断面の構造を調べ,6つの型に分類した.さらに,ホウオウゴケ属の種は染色体数から二群に分けられ,亜属・節の分類に大変重要な形質と認めた.本研究では上記のような形態学的特徴,及び染色体数に基づいた亜属・節の新しい分類を行い,Fissdens,Aneuron,Neoamblyothallia(新亜属),Pachyfissidens,Octodiceras及びSarawakiaの6亜属を認めた.さらに,Fissidens亜属をFissidens,Semilimbidium,Alomaの3節に,Neoamblyothallia亜属をNeoamblyothalliaとCrispidiumの2節に,またPachyfissidens亜属をPachynssidensとSerridiumの2節に分けることを提案した.2.日本新産のFissidens Iongisetus(ナガエホウオウゴケ)本種はインドのアッサムから1842年に初めて記載され、Bruggeman-Nannenga&Iwatsuki(1981)は本種の詳細を研究し報告した。今回我々は本種が日本(静岡県浜松市岩水寺)の石灰岩の洞窟の入り口付近に生育することを発見し、日本新産として、蘚苔類研究第9巻8号に報告した。
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