研究課題/領域番号 |
19570100
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
星野 保 独立行政法人産業技術総合研究所, ゲノムファクトリー研究部門, 主任研究員 (60357944)
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研究分担者 |
湯本 勲 独立行政法人産業技術総合研究所, ゲノムファクトリー研究部門, 研究クループ長 (30358303)
吉宗 一晃 独立行政法人産業技術総合研究所, ゲノムファクトリー研究部門, 研究員 (50325700)
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キーワード | 菌類 / 遺伝的多様性 / 環境適応 / 凍結耐性 / 種内分化 / 雪腐病菌 / 北米 |
研究概要 |
微生物は構造が単純で世代交代も早く、加えて容易に培養できることから、モデル生物として広く利用されている。一方、その多くは肉眼でその存在を確認できず、個体識別は容易では無い。風媒等によって栄養体・胞子が容易に移動することから、汎世界的に分布する種が多く、遺伝的多様性に乏しいとされ、化石により種分化の年代を測定することは困難なことから、微生物において分子進化時計の設定は、事実上不可能であった。このことは、進化学のモデル生物として微生物を利用する際の問題点である。雪腐病菌は、積雪環境下で越冬性作物に対して病原性を示す糸状菌の総称である。本研究の研究対象である低温性担子菌イシカリガマホタケは、菌核とよばれる直径数mmの「キノコの種」を形成することから、採取地での個体識別が可能であり、担子胞子が短命のため風媒等によって分散することが無く、主に菌糸の栄養増殖によって、その分布を拡大するとされる。このため他の微生物とは異なり、遺伝的多型が多く存在し、生息地に適応した亜種を生じ易いとされる。 ユーラシア各地にて採取した菌株は、交配試験の結果、3グループに分かれ、さらに核ゲノムおよびミトコンドリアゲノム由来マーカー遺伝子を用いた解析でも同様の結果を得た。採取地情報を考慮するとこれら3グループは、それぞれを亜種レベルで記載可能と判断した。北半球各地にて採取した菌株について生息地での適応に重要と考えられる要素について検討を行なった。多様な生育ステージでの凍結耐性の比較の結果、子実体形成期に凍結耐性を著しく低下し、これを補償するために不凍タンパク質を蓄積することを見出した。この結果から、不凍タンパク質が環境適応能に密接に関連すると判断した。既に本遺伝子のクローニングは終了しているため、今後、遺伝子の分類マーカー化を試み、この遺伝子マーカーを用いた本菌の多様性解析を行う予定である。
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