研究概要 |
雪腐病菌は,積雪環境下で越冬性作物に対して病原性を示す糸状菌の総称である.このため分類学的には卵菌類・子嚢菌類・担子菌類の多岐にわたる.本研究ではこれまでに雪腐病菌の環境適応能およびその機構は,分類群により異なることを明らかとしてきた.さらに極地より採集した雪腐病菌以外の低温適応菌類に研究対象を広げ検討を行った結果,これまでに卵菌類は凍結により菌糸が容易に死滅し,耐久性細胞のみ凍結耐性を有すると考えたが,南極産卵菌類フハイカビPythiumでは菌糸が凍結により死滅しない菌株が存在することを明らかにした.これらの菌株は宿主植物細胞内に進入することにより,さらに凍結耐性が上昇する可能性がある.また,凍結により生育を抑制される菌類は,幅広い分類群で収斂進化による多様な不凍タンパク質を細胞外に分泌することを見出してきた.南極産サカゲツボカビ類の未同定種1菌株より見出した不凍活性は,細胞内でのみその活性が確認され,容菌以外に細胞外に分泌されることは無かった.この菌株の生産する不凍タンパク質は,生化学的・免疫学的性質が既知の不凍タンパク質と異なることから,新規分子である可能性が高い.これらの結果から菌類は様々な門レベルで環境適応機構は大きく異なり,さらに種レベルでその環境適応能大きな差が有ることを明らかにした
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