研究概要 |
哺乳類卵子を包む透明帯は,動物種によって異なるが,3ないし4種類の糖タンパク質からなる網目状構造をもつ。受精の時に透明帯は精子と種選択的に結合し,この結合には透明帯の糖鎖部分が関わるとする糖鎖説とタンパク質骨格部分の立体構造が関わるとする超分子構造説が唱えられている。マウス透明帯では構成糖タンパク質の一つZP3が単独で精子結合活性を示すが,ブタおよびウシ透明帯ではZP3/ZP4複合体が活性を示し各々単独では活性を示さない。平成20年度は,ウシZP3,ZP4の様々な領域をバキュロウイルス-Sf9細胞系で発現させ相互作用解析を行った。その結果,ZP3のZPドメイン前半部とZP4のZPドメイン後半部とが相互作用すること,またZP3のZPドメイン後半部とZP4のZPドメイン前半部とが相互作用することを見い出した。ZPドメイン前半部と後半部との相互作用が繊維形成に関わる可能性が考えられた。組換えブタZP3,ZP4と天然ブタZP3,ZP4の糖鎖構造の違いを利用し,ZP3,ZP4のどちらが精子結合に必要なのかを調べた。その結果,ZP4の糖鎖構造に依存して精子結合活性が見られた。よって,ブタ精子結合にはZP3/ZP4複合体の超分子構造が必要であるが,結合の主体はZP4の糖鎖構造であることが示唆された。最後に,当初の研究実施計画とは異なるが,ブタZP3,ブタZP4のジスルフィド結合パターンを決定した。その結果,ZPドメインの後半部のパターンがマウスとブタとで異なることを見い出した。ブタZP3が単独で精子結合活性を示さないこととこのパターンの差異とが関連していることが示唆された。ZPドメインの後半部の構造機能解析が今後重要であると考えられた。
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