ダニアレルゲンDer f 2の脂質リガンドの同定については、核磁気共鳴法(NMR)を中心にした各種の方法によって進められた。まず、大腸菌破砕物中から脂質リガンドを同定する試みについては、炭素13と窒素15で標識した破砕物を精製タグ付きDer f 2と混合した後にタグ精製された試料を用いて各種三重共鳴NMRを測定したところ、Der f 2に結合した大腸菌由来のシグナルは(→4 GlcNAc β1→3 Fuc4NAc α1→4 ManNAcA β1→)という三糖の繰り返し構造に合致することがわかった。これは腸内細菌共通抗原の糖部分にあたり、この菌株においては複数候補の脂質部分構造が考えられた。その候補の一つリピドAを脂質部分に持つリポ多糖については、その市販品をDer f 2と混合するとゲルろ過クロマトグラフィーの流出パターンが変化することが共同研究者によりわかったため、さらに結合をNMRの化学シフト摂動法によって確認した。 以上の結果を受けて、Der f 2の脂質との相互作用様式を知る目的で、 Der f 2とリピドAの混合物の結晶化を行ったところ、Der f 2単体試料では結晶化しない多数の溶液条件で結晶が得られた。現在1.5オングストロームを超える分解能を持つ結晶が得られており、分子置換法によって解析を行ったところ、リガンドと考えられる電子密度が観察されている。しかし回折データの質がまだ不十分であるため、現在結晶化条件の最適化を進めている。
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