黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌やインフルエンザ菌の耐性菌は、ペニシリン系抗生薬に対する感受性が低下し、様々な耐性菌が出現している。このような問題を解決するために新たな抗生物質の開発が望まれている。本研究では、インフルエンザ菌の耐性菌由来PBPsタンパク質の立体構造を解明とその立体構造情報から有効な抗生剤を開発する事を目指す。インフルエンザ菌の耐性菌(β-lactamase negative ABPC resistant H. influenzae: BLNAR)は、ペニシリン結合性タンパク質(Penicillin Binding Protein; PBPs)に変異を引き起し、従来のペニシリン系抗菌薬だけでなく、セフェム(cephem)系抗菌薬の感受性も低下している。インフルエンザ菌はパスツレラ科のグラム陰性菌で、呼吸器感染や耳鼻咽喉科領域感染を引き起し、肺炎、菌血症、髄脳炎の原因となり、ヒトの上気道に常在菌として生息している。インフルエンザ菌由来PBPsは7種類が存在し、細胞壁の分解(PBP4)、成熟(PBP5-6)などに関わっている。本件度では、PBP4とPBP5タンパク質を発現、精製する事に成功した。また、単結晶作製に成功し分解能1.6Aと1.9Aでそれぞれ立体構造決定に成功した。これらの構造情報から、新たな抗生剤を設計、合成を行い、抗菌作用の確認を行い有効である事を確認した。
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