研究概要 |
本研究は糖尿病の標的蛋白質であるJNK1について、超高分解能X線構造解析と中性子線構造解析を相補的に進めて、創薬に有用な高精度構造を明らかにすることが目標である。この高精度構造により、副作用の少ない糖尿病治療薬の創出が期待できる。 昨年度までに安定かつ大量にJNK1サンプルを取得して微結晶を得ており、平成20年度は結晶化条件の最適化から開始した。しかしながら、目的である構造解析に見合う品質、サイズの結晶を得るに至らず、JNK1由来と思われるアモルファス状の沈殿が多く見られた。これはサンプル内に凝集を誘発する成分が含まれているためだと考えて、ゲルろ過法による、さらなる精製を試みた。わずかに残っていた高分子量の不純物を分離することができたので、再度結晶化条件の最適化を行った。その結果、微小であるが(20μm程度)、これまでにない良質の結晶を得ることに成功した。この微小結晶を用いてX線回折実験を行ったところ、6A分解能までの回折点を観測することができた。格子定数は、a=b=158A, c=8 4A, γ=120°であることが確認できている。このX線による予備実験結果と中性子実験に必要な高純度サンプルの大量調製法を確立していることから、今後実験を進めていき、構造解析レベルのサイズのJNK1結晶を調製し、当初の目的を完遂させることは可能であると考えている。なお、期間内には論文や学会発表する機会に恵まれなかったが、これまでの結果をまとめる意味で、2009年度蛋白質科学会年会で発表する。
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