生理活性ペプチドの立体構造形成機構を解明するために、プロウログアニリン、プロオピオメラノコルチン(POMC)、S-APPαを用いて研究を遂行した。 プロウログアニリンにおいては、SPring-8におけるデータ収集を行い、高分解能X線結晶構造の決定に成功した。この構造より、成熟体領域とプロ領域の間の相互作用だけが重要であるのではなく、中間体とプロ領域の相互作用も重要であるのではないかということが示唆された。さらに、還元変性状態およびフォールディング中間体からのフォールディング解析を行い、フォールディングの速度論的解析により、プロウログアニリンのフォールディングはスルフィドの酸化である初期相と形成されたジスルフィド結合のシャッフリングである後期相の2相から構成されることを明らかにした。すなわち、フォールディングの初期相においてジスルフィドの掛け違った異性体1と異性体2がまず集積され、後期相においてこれらの間違ったジスルフィドをシャッフリングすることでnativeに移行することがわかった。さらに、示差走査熱量測定による成熟体、各フォールディング異性体の安定性の評価も行った。 S-APPαに関しては、示差走査熱量測定による熱安定性の解析を行い、ヘパリン存在下での溶液中の挙動を光散乱実験で検証した。S-APPα、POMCの結晶構造解析のための結晶化条件検索も試みたが、構造解析に適する結晶を得る事はできなかった。 また、上記蛋白質のフォールディング実験において見いだした、アミノ酸やアミノ酸誘導体を添加する事による蛋白質フォールディングや結晶化の効率化に関する研究も行った。
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