研究概要 |
種々のアレルギー疾患、特に気道過敏性亢進や粘液産生といった気管支喘息の病態形成に重要な役割を果たしているサイトカインであるヒト・インターロイキン13(IL-13)とその受容体であるヒト・IL-13Rα1(細胞外領域)およびヒト・IL-4Rα(細胞外領域)との活性状態における相互作用様式を決定すると共に、活性状態のリガンドー受容体複合体の立体構造を明らかにし、連携研究者の有する生化学的知見を統合して、ヒトIL-13受容体の活性化機構を原子レベルで解明することが目的である。前年度は、IL-13、IL-13Rα1及びIL-4Rαの大量調製と相互作用解析を実施し、IL-13とIL-13Rα1およびIL-4Rαが1:1:1の結合比で活性化複合体を形成していることをその結合力と共に確認した(この結果は今年度に11に記載の雑誌論文として発表)。 平成20年度前半は、IL-13/IL-13Rα1相互作用を高分解能立体構造から明らかにすることを目指して、ヒトIL-13/ヒトIL-13Rα1(1:1)複合体の調製・結晶化・構造解析を抗体との複合体化の手法を用いて試みた。連携研究者らが保有するIL-13Rα1に対するマウス抗体を消化酵素パパインを用いてFab断片化した後に、陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製した。精製後のFabとIL-13およびIL-13Rα1との結合をゲル濾過クロマトグラフィーにより確認した結果、IL-13Rα1との結合は確認できたが、IL-13/IL-13Rα1/Fab複合体の形成を確認するには至らなかった。平成20年度後半は、前年度に決定されたIL-13/IL-13Rα1/IL-4Rα(1:1:1)複合体構造に基づき、連携研究者のグループと共同でIL-13によるシグナル伝達におけるIL-13Rα1のD1ドメインの役割をより詳細に理解するために、変異体を用いて構造と機能の相関を確認した。種々のD1ドメイン変異体を作製し、リガンドに対する結合および生物活性を確認した結果、D1ドメイン中のVal35, Lue38, Val42に対するAla変異体は、変異導入箇所がIL-13への結合部位に存在していないにもかかわらず、結合および生物活性が顕著に減少していた。この結果は、これらの疎水性残基がIL-13Rα1の立体構造形成に必須であることと考えられた。一方、Lys76, Lys77, IIe78に対するAla変異体で確認された活性の減少は、IL-13とIL-13Rα1間の結合が直接的に失われたことに起因することが、立体構造から確認された。 この結果は、連携研究者のグループおよびリガンド/受容体(1:1:1)複合体構造を決定したStanford大学のGarcia教授との共著論文として、現在投稿中である。
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