1.転写制御に関わるユビギチン結合蛋白質の結晶構造解析 NF-κBは、免疫、炎症、抗アポトーシスなどに関わる様々な遺伝子の転写を活性化する転写因子である。NF-κBは非刺激時にはIκBと結合して不活性型として細胞質に留まっている。細胞外からの刺激を受けると、IκBはリン酸化され、最終的にプロテアソームで分解される。その結果IκBから開放されたNF-κBは核内に移行することができ、転写を活性化する。IκBをリン酸化するIκB3キナーゼ(IKK)複合体は、キナーゼである2つの触媒サブユニットIKKαとIKKβ、ならびに制御サブユニットであるIKKγ(別名NEMO;NF-κB essential modulator)の3つのサブユニットで構成される。NEMOはLys63結合ポリユビキチンを特に認識することが分かっている。平成19年度はNEMOのユビキチン結合ドメインNUBの結晶構造解析に成功した。 2.DNA修復に関わるユビキチン結合蛋白質の結晶構造解析 損傷乗り越え複製(translesion synthesis)は、真核細胞がDNAの損傷を乗り越えて複製を行なう主要な経路である。DNAに損傷が起こると、核内増殖抗原(PCNA;proliferating cell nuclear antigen)がモノユビキチン化される。損傷乗り越え複製を行なうYファミリーポリメラーゼpolι(iota)およびpolη(eta)のC末端領域にはそれぞれ新規ユビキチン結合ドメインUBMおよびUBZが存在する。これらのユビキチン結合ドメインは、これらのポリメラーゼとモノユビキチン化したPCNAとの結合のために必要であり、損傷乗り越え複製に重要な調節的役割を担っている。平成19年度はpolηの新規ユビキチン結合ドメインUBZについて結晶構造解析に成功した。
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