コンデンシンは、染色体構築において中心的な役割を果たす蛋白質複合体である。バクテリアにおいても、単一のSMCサブユニットと二種類のnon-SMCサブユニット分子が広く保持されている。個々のnon-SMCサブユニットがどのような構造的基盤を介しながらSMCサブユニットの活性を制御し、染色体凝縮とその構築へと機能しているのか明らかにするため、本年度も引き続き、枯草菌コンデンシンnon-SMCサブユニット分子のどの領域がSMCサブユニットの活性を制御しているのかを調査した。 巨大なSMC蛋白質ついては、そのNとC末端領域を共発現することによりATP加水分解ドメイン(HEADドメイン)のみを取り扱った。non-SMCサブユニットScpAはN末端、中央、C末端の三つの領域から構成される。このうちN末端から中央にかけての領域はもう一つのサブユニットScpBと強固に結合し、C末端領域はHEADドメインと相互作用した。しかしScpBの非存在下では、全長またはN末端領域を欠いたScpAとHEADドメインの結合は明らかに弱く、C末端領域のみの時と比べその解離が速く、安定に結合することができない様であった。またScpAの中央領域の短いアミノ酸配列は、ScpA自身のC末端領域とScpB両分子に結合することが可能であった。このことはScpBがこの中央領域と相互作用することで、ScpAの分子内構造変化を制御可能であることを示しており、コンデンシン複合体の形成と解離の制御に直接結びついていると考えられた。
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