地球の温暖化や海外渡航の頻繁化により、マラリアは我が国においても将来無視できる問題ではない。マラリアの母子感染において、胎盤上の受容体であるプロテオグリカンの糖鎖(グリコサミノグリカン)が寄与していることが明らかになってきた。本研究では、当研究グループで開発された糖鎖工学の技術により、母子感染に重要な糖鎖構造についての情報を得ることを日的とする。本年度は、実施計画に基づき、以下の知見を得た。 1. グリコサミノグリカンオリゴ糖の組み換え条件の至適化 昨年度に開発した組み換えオリゴ糖の大量調製システムを用いて、糖鎖配列に依存した反応の至適条件を決定した。 2. マラリア病原虫に感染した赤血球の接着阻害実験に使用する配列の定まったグリコサミノグリカンオリゴ糖シリーズの合成 上記1の至適条件下で、接着阻害実験に供する配列の知られたオリゴ糖のシリーズを合成した。 3. マラリア病原虫に感染した赤血球の胎盤への接着に必要なグリコサミノグリカン糖鎖構造に関する情報収集の実験 今年度は、グリコサミノグリカン糖鎖の硫酸基に関する情報を得るために、上記2)に先立ち、まずは、化学的脱硫酸化処理と酵素消化とを組み合わせて、硫酸化の程度が異なるグリコサミノグリカンオリゴ糖を調製した。調製したオリゴ糖を用いて接着阻害実験を行った。その結果、硫酸基の割合がオリゴ糖の配列中約30%が指摘である可能性が示唆された。
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