本年度計画に沿って以下の研究を実施した。1つ目の研究課題である「リガンドに結合した受容体のエンドサイトーシス部位への輸送機構の解析」については、蛍光標識した出芽酵母の接合フェロモン(α-factor)に結合した受容体のエンドサイトーシス部位への移動を解析する実験系について、再現性の高い実験系の確立に成功した。この実験系を用いて野生型細胞でα-factorが受容体(Ste2p)に結合した後のエンドサイトーシス部位への輸送時間を調べたところ、約10分で80%のSte2p受容体がエンドサイトーシスの部位に輸送されることが明らかになった。次に、Ste2pのリン酸化、ユビキチン化変異体を作成し、α-factorが受容体に結合した後のエンドサイトーシス部位への輸送時間を調べたところ、ユビキチン化変異体ではほとんど影響が見られないのに対して、リン酸化変異体ではその輸送が著しく抑制された。この結果はリガンドに結合した受容体のエンドサイトーシス部位への輸送には受容体の細胞内ドメインのリン酸化が重要であることを示唆している。2つ目の研究課題である、「クラスリン小胞の初期エンドソームへの輸送機構」については、クラスリン小胞とアクチンケーブルの時間的空間的局在の解析を行った。エンドサイトーシス部位に局在する蛋白質を赤の蛍光蛋白質(RFP)で、アクチンケーブルを緑の蛍光蛋白質(GFP)で標識し、リアルタイム蛍光顕微鏡解析を行い、アクチンケーブルがエンドサイトーシスの部位に現れる時期を調べた。この結果、アクチンケーブルはクラスリンがエンドサイトーシスに現れた後にエンドサイトーシスの部位にリクルートされ、その後エンドサイトーシス小胞の形成が起こることが明らかになった。このことは、アクチンケーブルのリクルートにはクラスリン蛋白質の後にエンドサイトーシスの部位に現れる蛋白質が関与していることが示唆された。現在、酵母の遺伝子欠損ライブラリーを用いて、アクチンケーブルがエンドサイトーシスの部位へのリクルートされるために必要な蛋白質の同定を試みている。
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