研究概要 |
本研究計画では、ゲノムDNA上のメチル化模様の形成・維持機構を生化学的に理解することを目指している。 1.DNAメチル化は、遺伝子発現抑制に関与することが知られている。そのため、一旦DNAにメチル化模様が形成されると、DNA複製の過程で正確に維持される必要がある。この維持に関わる酵素として、Dnmt1がある。今回、Np95蛋白質が、Dnmt1をDNA複製点に移行させるのに必須であることを見出した。また、Np95遺伝子を潰すと、DNAメチル化模様が低下するので、DNAメチル化模様の維持に必要な因子を新たに同定することができた(Nature 2007)。 2.Dnmt3aとDnmt3bは、裸のDNAを基質にした場合はその性質はほとんど同じであったが、DNAをヌクレオソームに組込んだときに酵素的な違いを見出している。今回、その違いが、基質であるヌクレオソームのコア領域とリンカー部分のメチル化活性の差に起因するのかを明らかにする目的で実験を行った。リンカーDNA部分のメチル化を解析するために、ヌクレオソームが2つ連なったダイソームを再構成し基質として用いるのに加えて、リンカーヒストンであるヒストンH1の効果も調べた。その結果、Dnmt3aは、再構成したダイソームのリンカーDNAな叩分を優先的にメチル化することを明らかにすると共に、そのメチル化活性はヒストンH1により阻害されることを明らかにした(J. Mol. Biol., 2008)。
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