研究概要 |
本研究では、ゲノムDNA上のメチル化模様の形成機構を生化学的に理解することを目指している。 DNA上に、新規なメチル化模様を書き込むDnmt3aの性質について、試験管内で再構成したヌクレオソームを基質にして詳細に解析を行った。その結果、Dnmt3aは、ヌクレオソームとヌクレオソームの間に存在するリンカーDNA部分を優先的にメチル化すること、そのメチル化活性はヒストクH1により阻害されることを明らかにした(J. Mol. Biol.,2008)。これは、生体内において、Dnmt3aの高発現が単純に、ゲノムの高メチル化につながらないことを意味している。今後、さらに、条件を検討し、ヌクレオソーム構造に対し、Dnmt3aがメチル化修飾を導入しうる条件について解析を進める予定である。 一方、Dnmt3aには、異なるプロモーターが利用されることによって、N末端211アミノ酸短いアイソフォーム、Dnmt3a2、が存在する。Dnmt3aはゲノム全体のメチル化レベルが上昇した後期胚発生に発現するの対して、Dnmt3a2は雄性生殖細胞でゲノムワイドのメチル化レベルが更新する時期に特異的に高発現するため、その機能が異なることが予想されている。しかしながら、生化学的には、大きな性質の違いは報告されていない。私たちは、これまでにDnmt3aのN末端211アミノ酸領域がDNA結合を示すことを見出していたが、今回、2本鎖RNAにも結合すること、さらにDNA結合に必要な領域が1-57アミノ酸であること見出した。また、点変異を導入することにより、51番目と53番目のリシンがDNA結合に必要であることがわかった。今後、DNA結合能を失う変異をN末端部分に導入したDnmt3aを精製し、N末端のDNA結合の果たす機能を調べ、Dnmt3aとDnmt3a2の機能の違いについてアプローチする予定である。
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