小胞型グルタミン酸トランスポーター(VGLUT)はSLC17ファミリーに属するトランスポーターでV-ATPaseが形成したH+の電気化学的ポテンシャルを駆動力としてグルタミン酸をシナプス小胞内に輸送するトランスポーターである。 我々は、グルタミン酸認識と輸送のメカニズムを明らかにするために、VGLUTの大量発現、精製、活性測定系を開発した。この系を用いた速度論的な解析から、グルタミン酸輸送が塩素イオンを必要とする事等を明らかにした。また、VGLUTの変異型トランスポーターの機能解析から、His128、Arg184、Glu191の3つの残基がグルタミン酸輸送に必須である事が明らかとなった。 VGLUTの構造機能相関を明らかにするために、他のSLC17ファミリートランスポーターとの比較解析を行う事は有用である。そこで、ヒトのSLC17ファミリーの遺伝子を解析したところ、このファミリーに未知のメンバーがある事を見いだした。これを、クローン化しその機能を解析した。その結果、この新規トランスポーターが小胞内にヌクレオチドを蓄積する小胞型ATPトランスポーター(VNUT)である事を見いだした。また、これまでシアリンとして知られていたSLC17A5タンパク質がシナプス小胞内にアスパラギン酸とグルタミン酸を蓄積する小胞型興奮性アミノ酸トランスポーター(VEAT)である事を発見した。これらのトランスポーターは膜電位を駆動力とし、塩素イオンで活性化され、VGLUTと同様な性質を持っていた。 しかし、VLGUTの3つの必須残基のうち、2つはVNUTに保存されておらず、この2つの残基は基質特性に重要である事が明らかになった。また、VGLUTのArg184に相当する残基を置換するといずれも活性を失う事から、この残基がグルタミン酸等の有機アニオン輸送に決定的に重要な機能を持っている事が示された。
|