我々のプロテオミクスにより同定された新規タンパク質CLPABP(Cardiolipin and phosphatidic acid-binding protein)の機能解析を行った。CLPABPは2つのPH(プレックストリン相同)領域を持ち、それを介して前記の脂質と結合し、細胞内でミトコンドリアの表面上に局在した。CLPABPの複合体を精製し、それに含まれるタンパク質の種類を決定したところ、細胞質内におけるRNAの代謝に関与するタンパク質が多数同定された。また、複合体自身にRNAが含まれていることも明らかとなった。さらに、ミトコンドリアにおいてATP合成に必須のチトクロームcのmRNAがCLPABP複合体に含まれることを見出した。CLPABPはEGF受容体シグナル伝達を直接制御するタンパク質とは考えにくく、ミトコンドリアタンパク質が翻訳後もしく途中において、すでにミトコンドリアヘアクセスしやすいように手助けをしているタンパク質である可能性が高く、この機構はこれまでにない新たな概念と言える。今後、マイクロアレイによるCLPABP複合体に含まれる全RNA分子の同定を行い、CLPABPノックアウトマウス作製を進めているので樹立できしだい種々の詳細な解析を行い、本タンパク質の生理的役割を明らかにする。また、これまでにその機能を明らかにした新規タンパク質とは異なる、新たな分子についても順次解析を進めており、早急にその機能についての報告をしていく予定である。
|