本年度は、エンドカンナビノイドシステムが自然免疫系においてどのような役割を担っているのかを明らかにすることを目的として、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害活性における各種カンナビノイドの影響について検討した。その結果、カンナビノイド受容体アゴニストがヒトナチュラルキラー細胞株の白血病細胞株に対する細胞傷害活性を有意に促進し、これがカンナビノイドCB2受容体を介して起こることを明らかにした。また、ヒトナチュラルキラー細胞株の無刺激時の細胞傷害活性がCB2受容体アンタゴニスト処理により低下することから、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害の機構にエンドカンナビノイドシステムが関与している可能性が示唆された。興味深い事に、大麻の主要活性成分であるΔ^9-テトラヒドロカンナビノール(Δ^9-THC)もナチュラルキラー細胞の細胞傷害活性を減弱させることから、これがΔ^9-THCの免疫抑制作用の一部を説明するものと考えられた。 一方、第3のカンナビノイド受容体である可能性が近年指摘されていたオーファンGタンパク質共役型受容体であるGPR55の内在性リガンドが、エンドカンナビノイドの2-アラキドノイルグリセロールやアナンダミドではなく、リゾホスファチジルイノシトールであることを見出した。GPR55は、脳だけでなく脾臓などの免疫組織にも分布するとの報告があるため、リゾホスファチジルイノシトールとGPR55の免疫系における役割についても興味が持たれる。
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