研究概要 |
申請者が最近同定した分裂酵母の3つのアンモニウムトランスポーターAmt1,Amt2,Amt3は、異なる輸送特性と生理機能を持つことが示唆されている。これら3つのアンモニウムトランスポーターの生理機能を、その差異に焦点を当てながら明らかにすることが本研究の目的である。初年度である本年度は、Amt1の形態分化における役割について解析し、以下のような結果を得た(交付内定通知が10月1日であったため、半年間の研究実績)。 Amt1,Amt2,Amt3のなかで、Amt1はアンモニウムに対する親和性が最も高いと推定された。分裂酵母の野生型は低アンモニウム培地で寒天内部に侵入し繊維状に成長するが、Amt1の欠損株ではそのような繊維状侵入成長が見られなかった。グルタミンを窒素源として含む培地では、Amt1の欠損株は野生型と同様の繊維状侵入成長を示した。また、低アンモニウム培地に0.5mM cAMPを添加すると、Amt1欠損株が繊維状侵入成長を示すようになった。 これらの結果は、低アンモニウム条件で誘導される分裂酵母の形態分化に高親和性のアンモニウムトランスポーターが必要であること、および、形態分化の誘導にcAMP経路が関与していることを示している。Amt1がアンモニウムのセンサーとして機能し形態分化誘導のシグナルを生成している可能性と、細胞内に取り込まれたアンモニウム(またはその代謝産物)がシグナルとして働いている可能性が考えられる。分裂酵母アンモニウムトランスポーターの生理機能を解析により、細胞内シグナル伝達におけるトランスポーターの役割に関する理解が深まることが期待される。
|