昨年度までに、低アンモニウム条件で誘導される分裂酵母の形態分化におけるAmt1の役割に関して解析を進め、Amt1によって取り込まれたアンモニウムあるいはその代謝産物がシグナルとして働き、cAMP経路の活性化を介して、形態分化を引き起こすという可能性を明らかにした。今年度は、分裂酵母アンモニウムトランスポーターの新たな生理機能の解明を目指して研究を実施し以下のような結果を得た。 窒素源を含まない培地およびアンモニウム以外の窒素源(例えばトリプトファン)を含む培地において、アンモニウムトランスポーター三重破壊株の生育が野生型株と比較して明らかに悪いことを見出し、代謝により生じたアンモニウムの細胞内保持にアンモニウムトランスポーターが必要であることを明らかにした。これはアンモニウムトランスポーターの新規な生理機能である。また、アンモニウムトランスポーターの構造と機能の関係を明らかにするための部位特異的変異導入用プラスミドを作製した。このプラスミドはアンモニウムトランスポーターのC末端にFLAGエピトープやGFP(緑色蛍光タンパク質)などの任意の配列を付加できるようにデザインされている。 アンモニウムトランスポーターの生理機能として見出したアンモニウムの細胞内保持は、アンモニウムトランスポーターが、アンモニウムを窒素源として取り込むだけでなく、細胞外にアンモニウムが存在しないときも機能していることを示している点で興味深い。さらに、今回作製したプラスミドにより、アンモニウムトランスポーターの構造と機能の解析、細胞内局在の検討、アフィニティー精製による相互作用因子の同定などが可能になった。
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