研究概要 |
本研究では、Mcm4,6,7ヘリカーゼの活性化制御機構を生化学的に調べることにより、ゲノム複製開始とその制御の機構を明らかにする。精製したCdtlおよびMCMタンパク質複合体を用いた実験から以下のことが明らかになった。(1)Cdt1はMcm2、Mcm4/6と相互作用して、MCM複合体と共複合体を形成する。(2)Cdt1は、Mcm4/6/7とMcm2/3/4/5/6/7複合体のDNA結合活性を促進するとともに、Mcm4/6/7のヘリカーゼ活性を著しく促進する。(3)Cdt1と強く結合するGemininの添加で、Cdt1のMcm4/6/7のヘリカーゼ活性の促進が解除され、Mcm-Cdt1複合体が解離される。一方、Cdt1と結合できない変異gemininの添加はヘリカーゼ活性とMcm-Cdt1-DNA複合体に影響を与えない。これらの結果はCdt1が特異的にMCMのDNA結合とヘリカーゼ活性を促進することを示す。(4)UVクロスリンク法の実験からCdt1タンパク質はATPに結合することが示された。(5)ATP存在下では、Cdt1はMcm4/6/7と、分子量670kDaぐらいの共複合体(2個の三量体Mcm4/6/7[六量体]と3個のCdt1分子から構成される)を形成する。(6)Cdt1に保存される残基の点変異により、ATP結合、Mcmとの共複合体形成、DNA結合及びヘリカーゼの促進能のいずれも減弱した。以上の結果から、Cdt1タンパク質はpreRC形成において、ATPに結合し、MCMと複合体を形成して、MCMのDNA上へのloadingを促進する可能性が示唆された。また、複合体の高次構造を変化させることにより、DNAへの親和性およびヘリカーゼ活性を増加させていると考えてられる。大腸菌複製開始においては、DnaA、DnaBおよびDnaCが開始に必須なATP結合タンパク質であることが知られ、DnaCはATP結合に依存して、DnaBと複合体を形成しそのヘリカーゼ活性を促進する。上記の結果は、Cdt1はDnaCと機能的に極めて類似していることを強く示す。
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