研究概要 |
小胞体は、分泌タンパク質や膜タンパク質の合成および成熟において重要な役割を果たす。本研究の目的は、小胞体においてタンパク質品質管理を担う分子機構を明らかにすることである。特に、小胞体ストレス時に発現誘導される小胞体膜タンパク質HerpおよびにDerlin-1,2,3に着目し、それらとともに小胞体膜に形成されるタンパク質複合体の成分と機能を調べる。2年計画の1年目である本年度は、まず小胞体膜のタンパク質複合体を同定するために、マウス胚性線維芽細胞およびマウス肝臓から調製したミクロソーム画分をジギトニンで可溶化し、ショ糖密度勾配遠心を行った。各画分をウエスタンブロッティングで解析した結果、Derlin-1やDerlin-2、HRD1、p97などは、構成因子の組み合わせが異なる少なくとも2種類の複合体を形成しており、小胞体ストレスによって、より大きな複合体に変化することが示された。小胞体ストレスが負荷されていない状態では、HerpとDeilm-2、HRD1の3者を含む複合体が存在するが、小胞体ストレス状態ではHerpとHRD1の結合が増強し、逆にHerpとDerlin-2、およびDerlin-2とHRD1の結合は減弱した。これらの複合体はHerp欠損による影響を受けた。また、小胞体ストレス状態ではDerlin-1とDerlin-2、p97の3者を含む複合体の形成が誘導され、これはHerp欠損の影響を受けなかった。以上の結果から、小胞体におけるタンパク質品質管理に関与する膜タンパク質複合体は複数種あり、小胞体の負荷状態に応じてその存在様式を変化させていることが明らかになった。これらの実験と並行して、Derlin-1,2,3各遺伝子欠損マウスの作製を進めた。Derlin-1,2ではヘテロマウスが、Derlin-3ではキメラマウスが誕生した。さらに交配と飼育を継続し、2年目の研究に役立てる予定である。
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