研究概要 |
小胞体は、分泌タンパク質や膜タンパク質の合成および成熟において重要な役割を果たす。本研究の目的は、小胞体においてタンパク質品質管理を担う分子機構を明らかにすることである。特に、小胞体ストレス時に発現誘導される小胞体膜タンパク質HerpおよびにDerlin-1,2,3に着目し、それらとともに小胞体膜に形成されるタンパク質複合体の成分と機能を調べることを試みた。2年計画の1年目である昨年度は、小胞体膜のタンパク質複合体を同定するために、野生型マウス胚性線維芽細胞および肝臓から調製したミクロソーム画分を解析し、HerpやDerlinなどの構成因子の組み合わせが異なる複数種の複合体が存在することや、小胞体ストレスによって複合体組成が変化することを示した。そこで、2年目である今年度は、新たに作製した抗体などを用いて連続免疫沈降実験などを行い、小胞体ストレスが負荷されていない状態ではHerpとDerlin-2、HRD1の3者を同時に含む複合体が存在することや、小胞体ストレス状態ではHerpとHRD1の結合が増強し、さらに、新たに発現誘導されるDerlin-3がHerpを含む複合体に含まれることを明らかにした。タンパク質レベルでDerlin-3の挙動を観察したことは、本研究の中で特筆すべき成果である。また、並行して進めていたDerlin-1,2,3各遺伝子欠損マウスの作製については、Derlin-1およびDerlin-2の完全欠損マウスは誕生しないこと、Derlin-3完全欠損マウスは見かけ上、正常に誕生することが明らかになった。これらの結果によって、Derlin-1および2が個体発生に必須であることや、互いに機能損失を補償できないことが初めて示された。本研究で得られた知見や、完成したDerlin-3欠損マウスを利用することは、今後の当該分野の研究の発展に有用である。
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